七十ばかりに成《な》る被害者《ひがいしや》の老人《ぢいさん》が殊《こと》に頑固《ぐわんこ》に主張《しゆちやう》した。
「泥棒《どろぼう》なんぞする奴《やざ》あ、わし大嫌《だえきれえ》でがすから、わし等《ら》畑《はたけ》の茄子《なす》引《ひ》ん※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《もぎ》つたんだつてちやんと知《し》つちや居《ゐ》んでがすから、いや全《まつた》くでがす、お内儀《かみ》さん處《とこ》の甘藷《さつま》も盜《と》りあんしたとも、ぐうづら蔓《つる》引《ひ》つこ拔《ぬ》いて打棄《うつちや》つて、いや本當《ほんたう》でがす、わしや嘘《ちく》なんざあいふな嫌《きれえ》でがすから、其《そ》れ處《どこ》ぢやがあせんお内儀《かみ》さん、夜《よる》伐《き》つて來《き》て、朝《あさ》つぱらに成《な》つたらはあ引《ひ》つ懸《か》けたに相違《さうゐ》ねえつちんでがすから、なにわしも筵《むしろ》打《ぶ》つ掛《か》けた處《ところ》見《み》あんした、筵《むしろ》で分《わか》るから駄目《だめ》でがす、いや全《まつた》く酷《ひで》え野郎《やらう》でがすどうも」内儀《かみ》さんは其《そ》れは豫期《よき》
前へ 次へ
全956ページ中304ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング