《な》つた草《くさ》の中《なか》へ蜀黍《もろこし》の穗《ほ》は縛《しば》つた儘《まゝ》どさりと置《お》いてあつたのである。其處《そこ》にはもうそつけなくなつた女郎花《をみなへし》の莖《くき》がけろりと立《た》つて、枝《えだ》まで折《を》られた栗《くり》が低《ひく》いながらに梢《こずゑ》の方《はう》にだけは僅《わづか》に笑《ゑ》んで居《ゐ》る。其《そ》の小《ちひ》さな芝栗《しばぐり》が偶然《ひよつくり》落《お》ちてさへ驚《おどろ》いて騷《さわ》ぐだらうと思《おも》ふやうに薄弱《はくじやく》な蟋蟀《こほろぎ》がそつちこつちで微《かす》かに鳴《な》いて居《ゐ》る。一寸《ちよつと》他人《ひと》の目《め》には觸《ふ》れぬ場所《ばしよ》であつた。穗《ほ》を掩《おほ》うた其《そ》の筵《むしろ》が勘次《かんじ》の所業《しわざ》であることを的確《てきかく》に證據立《しようこだ》てゝ居《ゐ》た。
 主人《しゆじん》の内儀《かみ》さんは一|應《おう》被害者《ひがいしや》へ噺《はなし》をつけて見《み》た。被害者《ひがいしや》の家族《かぞく》は律義者《りちぎもの》で皆《みな》激《げき》し切《き》つて居《ゐ》る。
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