。
「お内儀《かみ》さん、わしも又《また》間違《まちがえ》しあんしてどうも此《こ》れお内儀《かみ》さん處《とこ》へは閾《しきゐ》が高《たか》くつて何《なん》でがすが、わし居《ゐ》なくでも成《な》つちや子奴等《こめら》仕《し》やうがあせんから、助《たす》かれるもんならわしもはあ……」と彼《かれ》はぐつたり首《くび》を俛《た》れた。
主人《しゆじん》の内儀《かみ》さんは勘次《かんじ》が蜀黍《もろこし》を伐《き》つたことはもう知《し》つて居《ゐ》た。まだ癖《くせ》が止《や》まないかと一|度《ど》は腹《はら》を立《たて》ても見《み》たり惘《あき》れもしたりしたが、然《しか》し何處《どこ》といつて庇護《かば》つてくれるものが無《な》いので恁《か》うして來《く》るのだと、目前《もくぜん》に其《その》萎《しを》れた姿《すがた》を見《み》ると有繋《さすが》に憐《あはれ》に成《な》つて叱《しか》る處《どころ》ではなかつた。それではどうか心配《しんぱい》して見《み》てやらうといはれて勘次《かんじ》は顏《かほ》が蘇生《いきかへ》つたやうに成《な》つた。彼《かれ》は何《なん》でも主人《しゆじん》が盡力《じん
前へ
次へ
全956ページ中301ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング