「俺《お》らあ家《うち》で甘藷《さつま》くつたなんてゆはねえんだ」甘藷《さつまいも》を手《て》に持《も》つて怖《お》づ/\いつた。彼《かれ》は只《たゞ》嬉《うれ》しかつたのである。
「何故《なぜ》ゆはねえんだ」與《あた》へた人《ひと》は聞《き》いた。
「何故《なぜ》でもだ」
「そんぢやえゝ、其《その》甘藷《さつま》取《と》つ返《けえ》しつちまあから」と驚《おどろ》かされて
「そんでも俺家《おらぢ》のおとつゝあ甘藷《さつま》喰《く》つたなんてゆふんぢやねえぞつて云《ゆ》つたんだ」與吉《よきち》は媚《こ》びるやうな容子《ようす》でいつた。
「よきら家《へ》の甘藷《さつま》うめえか」
「旦那《だんな》のがはうめえつて云《ゆ》つたんだ」
「おとつゝあ云《ゆつ》たのか※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、131−15]《ねえ》云《ゆつ》たのか」
「※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、132−1]《ねえ》ぢやねえ、おとつゝあだ」
「おとつゝあは家《うち》で甘藷《さつま》くつて旦那《だんな》のがうめえつちつたのか」
「さうなんだわ」無心
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