くつ》が心《こゝろ》のうちに捏造《ねつざう》されるのである。一《ひと》つには良心《りやうしん》の苛責《かしやく》を餘所《よそ》にしてさうして又《また》それが何處《どこ》までも發見《はつけん》せられないものであるならば他人《ひと》の物《もの》を盜《と》ることは口腹《こうふく》の慾《よく》を滿足《まんぞく》せしむるには容易《ようい》で且《かつ》輕便《けいべん》な手段《しゆだん》でなければならぬ筈《はず》である。恁《か》ういふ理由《わけ》で比較的《ひかくてき》餘裕《よゆう》のある百姓《ひやくしやう》よりも貧乏《びんばふ》な百姓《ひやくしやう》は十|分《ぶん》早《はや》く然《し》かも數次《しば/″\》其《そ》の新鮮《しんせん》な蔬菜《そさい》を味《あぢあ》ふのである。偶《たま/\》市場《しぢやう》に遠《とほ》く馬《うま》の脊《せ》で運《はこ》ぶ者《もの》は其《そ》の成熟《せいじゆく》の期《き》を早《はや》めたつやゝかな數《かず》が幾《いく》ら有《あ》つても自分《じぶん》の口《くち》には入《い》れない。少《すこ》しづゝでも他《ほか》の必要品《ひつえうひん》を求《もと》める爲《ため》に錢《ぜに》に
前へ
次へ
全956ページ中283ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング