少《すくな》い黄昏《たそがれ》の小徑《こみち》につやゝかな青物《あをもの》を見《み》ると遂《つひ》した料簡《れうけん》からそれを拗切《ちぎ》つて前垂《まへだれ》に隱《かく》して來《く》ることがある。畑《はたけ》の作主《さくぬし》が其《その》損失《そんしつ》以外《いぐわい》にそれを惜《をし》む心《こゝろ》から蔭《かげ》で勢《いきほ》ひ激《はげ》しく怒《おこ》らうともそれは顧《かへり》みる暇《いとま》を有《も》たない。勘次《かんじ》の痩《や》せた茄子畑《なすばたけ》もさうして襲《おそ》はれた。其《そ》の莖《くき》を痛《いた》めても構《かま》はぬ拗切《ちぎ》りやうを見《み》て失望《しつばう》と憤懣《ふんまん》の情《じやう》とを自然《しぜん》に經驗《けいけん》せざるを得《え》なかつた。然《しか》しながら彼《かれ》はつく/″\と忌々敷《いま/\し》い其《その》心持《こゝろもち》に熟《じゆく》して居《ゐ》ながら自分《じぶん》も亦《また》他《た》の虚《きよ》に乘《じよう》ずることを敢《あへ》てするのであつた。一《ひと》つにはどうで他人《ひと》にも盜《と》られるのだからといふ自暴自棄《やけ》の理窟《り
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