《おと》とお袋《ふくろ》の唄《うた》ふ聲《こゑ》とがいつとはなしに誘《さそ》つたのであつたかも知《し》れぬ。首《くび》は寧《むし》ろ倒《さかさま》に垂《た》れて額《ひたひ》がいつでも暑《あつ》い日《ひ》に照《て》られて汗《あせ》ばんで居《ゐ》た。百姓《ひやくしやう》は皆《みな》此《こ》の見窄《みすぼら》しい女《をんな》を顧《かへり》みなかつた。村落《むら》から村落《むら》へ野《の》を渡《わた》る時《とき》女《をんな》の姿《すがた》は人目《ひとめ》を惹《ひ》くべき要點《えうてん》が一つも備《そな》はつて居《ゐ》なかつた。然《しか》しいつの間《ま》にか人《ひと》が遠《とほ》くより見《み》るやうに成《な》つた。行《ゆ》き違《ちが》ふ女房等《にようばうら》は額《ひたひ》に照《て》ら[#「ら」に「ママ」の注記]れて眠《ねむ》つて居《ゐ》る子《こ》を見《み》て痛々敷《いた/\しい》と思《おも》ふのであつた。女《をんな》は唄《うた》はなくても太皷《たいこ》の音《ね》が村落《むら》の子《こ》を遠《とほ》くから誘《さそ》ふのに氣《き》の乘《の》らぬ唄《うた》ひやうをして只《たゞ》其《そ》の一|句《く》を
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