は其《そ》の女《をんな》の唄《うた》である。女《をんな》は聲《こゑ》を高《たか》く唄《うた》うては又《また》聲《こゑ》を低《ひく》くして其《そ》の句《く》を反覆《はんぷく》する。其《そ》の唄《うた》ふ處《ところ》は毎日《まいにち》唯《たゞ》此《こ》の一|句《く》に限《かぎ》られて居《ゐ》た。女《をんな》は年増《としま》で一人《ひとり》の子《こ》を負《お》うて居《ゐ》る。鬼怒川《きぬがは》を徃復《わうふく》する高瀬船《たかせぶね》の船頭《せんどう》が被《かぶ》る編笠《あみがさ》を戴《いたゞ》いて、洗《あら》ひ曝《ざら》しの單衣《ひとへ》を裾《すそ》は左《ひだり》の小褄《こづま》をとつて帶《おび》へ挾《はさ》んだ丈《だけ》で、飴《あめ》は箱《はこ》へ入《い》れて肩《かた》から掛《か》けてある。暮《あつ》い日《ひ》は笠《かさ》の編目《あみめ》を透《とほ》して女《をんな》の顏《かほ》に細《ほそ》い強《つよ》い線《せん》を描《ゑが》く。女《をんな》の顏《かほ》は窶《やつ》れて居《ゐ》た。子《こ》は概《おほむ》ね眠《ねむ》つて居《ゐ》た。耳《みゝ》もとで鳴《な》る太皷《たいこ》の喧《やかま》しい音
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