者《ひかげもの》であつた。それが後《のち》に成《な》つてから方方《はう/″\》に陸地測量部《りくちそくりやうぶ》の三|角測量臺《かくそくりやうだい》が建《た》てられて其《その》上《うへ》に小《ちひ》さな旗《はた》がひら/\と閃《ひらめ》くやうに成《な》つてから其《その》森《もり》が見通《みとほ》しに障《さは》るといふので三四|本《ほん》丈《だけ》伐《き》らせられた。杉《すぎ》の大木《たいぼく》は西《にし》へ倒《たふ》したのでづしんとそこらを恐《おそ》ろしく搖《ゆる》がしてお品《しな》の庭《には》へ横《よこ》たはつた。枝《えだ》は挫《くぢ》けて其《その》先《さき》が庭《には》の土《つち》をさくつた。それでも隣《となり》では其《その》木《き》の始末《しまつ》をつける時《とき》にそこらへ散《ち》らばつた小枝《こえだ》や其《その》他《た》の屑物《くづもの》はお品《しな》の家《いへ》へ與《あた》へたので思《おも》ひ掛《が》けない薪《たきゞ》が出來《でき》たのと、も一《ひと》つは幾《いく》らでも東《ひがし》が隙《す》いたのとで、隣《となり》では自分《じぶん》の腕《うで》を斬《き》られたやうだと惜《
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