は》へ出《で》た。直《す》ぐに洗《あら》つた鍋《なべ》と手桶《てをけ》を持《も》つて暗《くら》い庭先《にはさき》からぼんやり戸口《とぐち》へ姿《すがた》を見《み》せた。閾《しきゐ》へ一寸《ちよつと》手桶《てをけ》を置《お》いてお品《しな》と顏《かほ》を見合《みあは》せた。手桶《てをけ》の水《みづ》は半分《はんぶん》で兩方《りやうはう》の蒟蒻《こんにやく》へ水《みづ》が乘《の》つた。
お品《しな》は三|人連《にんづれ》で東隣《ひがしどなり》へ風呂《ふろ》を貰《もら》ひに行《い》つた。東隣《ひがしどなり》といふのは大《おほ》きな一構《ひとかまへ》で蔚然《うつぜん》たる森《もり》に包《つゝ》まれて居《ゐ》る。
外《そと》は闇《やみ》である。隣《となり》の森《もり》の杉《すぎ》がぞつくりと冴《さ》えた空《そら》へ突《つ》つ込《こ》んで居《ゐ》る。お品《しな》の家《いへ》は以前《いぜん》から此《こ》の森《もり》の爲《た》めに日《ひ》が餘程《よほど》南《みなみ》へ廻《まは》つてからでなければ庭《には》へ光《ひかり》の射《さ》すことはなかつた。お品《しな》の家族《かぞく》は何處《どこ》までも日蔭
前へ
次へ
全956ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング