お品《しな》は與吉《よきち》の頻《ほゝ》をふう/\と吹《ふ》いてそれから芋《いも》を自分《じぶん》の口《くち》で噛《か》んでやつた。お品《しな》の茶碗《ちやわん》は恁《か》うして冷《ひ》えた。おつぎは冷《つめ》たくなつた時《とき》鍋《なべ》のと換《かへ》てやつた。お品《しな》は欲《ほ》しくもない雜炊《ざふすゐ》を三|杯《ばい》までたべた。幾《いく》らか腹《はら》の中《なか》の暖《あたゝ》かくなつたのを感《かん》じた。さうして漸《やうや》く水離《みづばな》れのした茶釜《ちやがま》の湯《ゆ》を汲《く》んで飮《の》んだ。おつぎは庭先《にはさき》の井戸端《ゐどばた》へ出《で》て鍋《なべ》へ一|杯《ぱい》釣瓶《つるべ》の水《みづ》をあけた。おつぎが戻《もど》つた時《とき》
「おつう、今夜《こんや》でなくつてもえゝや」とお品《しな》はいつた。おつぎは默《だま》つて俵《たわら》の側《そば》の手桶《てをけ》へ手《て》を掛《か》けて
「此《これ》へも水《みづ》入《せえ》て置《お》かなくつちやなんめえな」
「さうすればえゝが大變《たえへん》だらえゝぞ」
お品《しな》がいひ切《き》らぬうちにおつぎは庭《に
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