のに、おつぎは嘗《かつ》て青年《せいねん》との間《あひだ》に一|語《ご》を交《まじ》へることさへ其《その》權能《けんのう》を抑《おさ》へられて居《ゐ》た。孰《いづ》れにしてもおつぎの心《こゝろ》には有繋《さすが》に微《かす》かな不足《ふそく》を感《かん》ずるのであつた。勘次《かんじ》は洗《あら》ひ曝《ざら》しの襦袢《じゆばん》を褌《ふんどし》一つの裸《はだか》へ引《ひ》つ掛《かけ》て、船頭《せんどう》が被《かぶ》るやうな藺草《ゐぐさ》の編笠《あみがさ》へ麻《あさ》の紐《ひも》を附《つ》けて居《ゐ》る。
 勘次《かんじ》に導《みちび》かれておつぎは仕事《しごと》が著《いちじ》るしく上手《じやうず》になつた。おつぎが畑《はたけ》へ往來《わうらい》する時《とき》は村《むら》の女房等《にようばうら》は能《よ》くいつた。
「何《なん》ちう、おつかさまに似《に》て來《き》たこつたかな、歩《ある》きつきまでそつくりだ」
「雀斑《そばかす》がぽち/\してつ處《とこ》までなあ」お品《しな》には目《め》と鼻《はな》のあたりに雀斑《そばかす》が少《すこ》しあつたのである。おつぎにも其《そ》れがその儘《まゝ》
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