女《をんな》の姿《すがた》が殖《ふ》えるのである。彼等《かれら》は少時《しばし》の休憩《きうけい》にも必《かなら》ず刈《か》り倒《たふ》した麥《むぎ》を臀《しり》に敷《し》いて其《そ》の白《しろ》い卯木《うつぎ》の下《した》に僅《わづか》でも日《ひ》を避《さ》ける。
到底《たうてい》彼等《かれら》の白《しろ》い菅笠《すげがさ》と赤《あか》い帶《おび》とは廣《ひろ》い野《の》を飾《かざ》る大輪《たいりん》の花《はな》でなければならぬ。其《そ》の一《ひと》つの要件《えうけん》がおつぎには缺《か》けて居《ゐ》た。
暑《あつ》い氣候《きこう》は百姓《ひやくしやう》の凡《すべ》てを其《その》狹苦《せまくるし》い住居《すまゐ》から遠《とほ》く野《の》に誘《さそ》うて、相互《さうご》に其《その》青春《せいしゆん》のつやゝかな俤《おもかげ》に憧憬《あこがれ》しめるのに、さうして刺《とげ》の生《は》えた野茨《のばら》さへ白《しろ》い衣《ころも》を飾《かざ》つて快《こゝろ》よいひた/\と抱《だ》き合《あふ》ては互《たがひ》に首肯《うなづ》きながら竭《つ》きない思《おもひ》を私語《さゝや》いて居《ゐ》る
前へ
次へ
全956ページ中263ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング