れめえか」
「何故《なぜ》そんなこといふんだ」勘次《かんじ》は驚《おどろ》いて目《め》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つた。
「そんでも可惜《あつたら》もんだからよ」
「汝《われ》自分《じぶん》で梯子《はしご》掛《か》けて這入《へえ》んのか」
「俺《お》ら可怖《おつかねえ》から厭《や》だがな」
「そんなこといふもんぢやねえ、又《また》拘引《つゝてか》れたらどうする、そん時《とき》は汝《われ》でも行《え》くのか」勘次《かんじ》は恁《か》ういつて苦笑《くせう》した。
 其《その》晩《ばん》は其《そ》れつ切《き》り二人《ふたり》の間《あひだ》に噺《はなし》はなかつた。

         八

 與吉《よきち》が五《いつ》つの春《はる》に成《な》つた。ずん/\と生長《せいちやう》して行《ゆ》く彼《かれ》の身體《からだ》はおつぎの手《て》に重量《ぢうりやう》が過《す》ぎて居《ゐ》る。しがみ附《つ》いて居《ゐ》た筍《たけのこ》の皮《かは》が自然《しぜん》に其《そ》の幹《みき》から離《はな》れるやうに、與吉《よきち》は段々《だん/\》おつぎの手《て》から除《のぞ》かれるやうに成
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