》きて居《ゐ》ればそんな心配《しんぱい》はまだ十六のおつぎがするのではない。おつぎは更《さら》に自分《じぶん》の衣物《きもの》に困《こま》つた。短《みじか》くなるばかりではなく綻《ほころ》びにさへおつぎは當惑《たうわく》するのである。
「お針《はり》出來《でき》なくつちや仕樣《しやう》ねえなあ」おつぎは何時《いつ》でも嘆息《たんそく》するのであつた。
「お針《はり》にでも何《なん》でも遣《や》れる時《とき》にや遣《や》つから、奉公《ほうこう》にでも行《い》つて見《み》ろ、幾《いく》つに成《な》つたつて碌《ろく》なこと出來《でき》るもんか、十六|位《ぐれえ》ぢや貧乏人《びんばふにん》はまあだ行《い》けねえたつて仕《し》やうがあるもんか、さう汝《われ》見《み》てえに痩虱《やせじらみ》たかつたやうにしつきりなし云《い》ふもんぢやねえ」
「おとつゝあはそんだつて奉公《ほうこう》にでも行《い》つてるものげは家《うち》で拵《こせ》えてやんだんべな」
「そんだつてなんだつて遣《や》れつ時《とき》でなくつちや遣《や》れねえから」
 十六ではまだ針《はり》を持《も》たなくつてもいゝといふのはそれは無理《
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