《にん》は默《だま》つて歩《ある》いた。傭人等《やとひにんら》は笑《わら》つて勘次《かんじ》の容子《ようす》を見《み》て居《ゐ》た。
「おとつゝあ、どうしたつけ」おつぎは家《うち》に歸《かへ》ると共《とも》に聞《き》いた。
「そんでもまあ大丈夫《だいぢやうぶ》になつた、櫟《くぬぎ》根《ね》つ子《こ》なくつて助《たす》かつた」勘次《かんじ》はげつそりと力《ちから》なくいつた。
「俺《お》ら昨日《きにやう》は重《おも》たくつて酷《ひど》かつたつけぞ、其《そ》の所爲《せゐ》か今日《けふ》は肩《かた》痛《いて》えや」おつぎは悦《よろこ》ばしげにいつた。
「俺《おら》こゝで居《ゐ》なくなつちや汝等《わツら》も大變《たえへん》だつけな」勘次《かんじ》は間《あひだ》を暫《しばら》く措《お》いてぽさ/\としていつた。
 此《こ》の事《こと》があつてからも勘次《かんじ》の姿《すがた》は直《すぐ》に唐鍬《たうぐは》持《も》つて林《はやし》の中《なか》に見出《みいだ》された。
 五六|日《にち》經《た》つて勘次《かんじ》は針立《はりだて》と針箱《はりばこ》とを買《か》つて來《き》た。
「おつう、汝《われ》も
前へ 次へ
全956ページ中232ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング