以來《いらい》愼《つゝし》めるか、此《こ》の次《つぎ》にこんなことが有《あ》つたら枯枝《かれえだ》一つでも赦《ゆる》さないからな、今日《けふ》はまあ此《こ》れで歸《かへ》れ、其《そ》の櫟《くぬぎ》の根《ね》は此處《こゝ》へ置《お》いて行《ゆ》くんだぞ」勘次《かんじ》は草刈籠《くさかりかご》を卸《おろ》さうとした。
「そんなもの此《こ》の庭《には》へ置《お》けといふんぢやないんだ、置《お》く處《ところ》は知《し》つてるんだろう、解《わか》らない奴《やつ》だな、それうつかりしないで足下《あしもと》を氣《き》をつけるんだ」巡査《じゆんさ》は叱《しか》つた。勘次《かんじ》はそつと土《つち》を踏《ふ》んで庭《には》を出《で》た。
 門《もん》の外《そと》にはおつぎが與吉《よきち》を連《つ》れて歔欷《すゝりなき》して居《ゐ》る。與吉《よきち》はおつぎの泣《な》くのを見《み》て自分《じぶん》も聲《こゑ》を放《はな》つ。おつぎは聲《こゑ》の洩《も》れぬやうに袂《たもと》でそれを掩《おほ》うて居《ゐ》る。
「よき泣《な》かねえで歸《け》えれ」勘次《かんじ》は與吉《よきち》の手《て》を執《と》つた。三|人
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