れう》に識別《しきべつ》し得《え》なかつたのである。
「勘次《かんじ》、それぢや此《こ》れを持《も》つて跟《つ》いて來《く》るんだ」巡査《じゆんさ》はいつた。勘次《かんじ》は顫《ふる》へた。
「草刈籠《くさかりかご》でも何《なん》でもいゝ、此《こ》れを入《い》れて後《あと》から跟《つ》いて」
「へえ、何處《どこ》まで持《も》つて行《い》くんでがせう」勘次《かんじ》は逡巡《ぐつ/\》して居《ゐ》る。
「何處《どこ》までゝもいゝんだ」巡査《じゆんさ》は呶鳴《どな》つてぴしやりと横手《よこて》で勘次《かんじ》の頬《ほゝ》を叩《たゝ》いた。
 勘次《かんじ》は草刈籠《くさかりかご》を脊負《せお》つて巡査《じゆんさ》の後《あと》に跟《つ》いて主人《しゆじん》の家《いへ》の裏庭《うらには》へ導《みちび》かれた。巡査《じゆんさ》が縁側《えんがは》の坐蒲團《ざぶとん》へ腰《こし》を掛《か》けた時《とき》勘次《かんじ》は籠《かご》を脊負《せお》つた儘《まゝ》首《くび》を俛《た》れて立《た》つた。それは餘《あま》りに見《み》え透《す》いた仕事《しごと》なので有繋《さすが》に分別盛《ふんべつざかり》の主人《
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