ちやつたぞ」おつぎは更《さら》に聲《こゑ》を殺《ころ》していつた。勘次《かんじ》はひよつこり起《お》きて何《なに》もいはずにおつぎの顏《かほ》を凝然《ぢつ》と見《み》つめた。暗《くら》い家《うち》の中《なか》には漸《やうや》く手《て》ランプが點《とも》された。勘次《かんじ》もおつぎも唯《たゞ》其《そ》の目《め》が光《ひか》つて見《み》えた。
次《つぎ》の日《ひ》巡査《じゆんさ》は隣《となり》の傭人《やとひにん》を連《つ》れて來《き》て壁際《かべぎは》の木《き》の根《ね》を檢《しら》べさせたが櫟《くぬぎ》の根《ね》は案外《あんぐわい》に少《すくな》かつた。それでもおつぎの手《て》では棄《す》て切《き》れなかつたのである。
「此《こ》りや櫟《くぬぎ》がもつと有《あ》つた筈《はず》ぢやないか勘次《かんじ》はどうかしやしないか」巡査《じゆんさ》は恁《か》ういつてあたりを見《み》たが勘次《かんじ》の小《ちひ》さな建物《たてもの》の何處《どこ》にもそれは發見《はつけん》されなかつた。さういつても實際《じつさい》に巡査《じゆんさ》の目《め》には櫟《くぬぎ》と他《ほか》の雜木《ざふき》とを明瞭《めい
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