ん》でも將來《しやうらい》の警《いまし》めをしようと思《おも》つた。其《そ》の以前《いぜん》から勘次《かんじ》は秋《あき》になれば掛稻《かけいね》を盜《ぬす》むとかいふ蔭口《かげぐち》を利《き》かれて巡査《じゆんさ》の手帖《ててふ》にも載《の》つて居《ゐ》るのだといふやうなことがいはれて居《ゐ》たのであつた。主人《しゆじん》はそれでも竊《ひそか》に人《ひと》を以《もつ》て木《き》の根《ね》を運《はこ》んだかどうかといふことを聞《き》かせて見《み》た。彼《かれ》が心《こゝろ》づいて謝罪《しやざい》するならばそれなりにして遣《や》らうと思《おも》つたからである。彼《かれ》は主人《しゆじん》の心《こゝろ》を知《し》る由《よし》はなかつた。
「何處《どこ》でも見《み》た方《はう》がようがす、わしは決《けつ》して運《はこ》んだ覺《おぼ》えなんざねえから」彼《かれ》は恐《おそ》ろしい權幕《けんまく》できつぱり斷《ことわ》つた。
 主人《しゆじん》は村《むら》の駐在所《ちうざいしよ》の巡査《じゆんさ》へ耳打《みゝう》ちをした。巡査《じゆんさ》は或《ある》日《ひ》ぶらつと勘次《かんじ》の家《うち》へ行
前へ 次へ
全956ページ中222ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング