であるのを見《み》た。平常《いつも》ならそんなことはないのだが自分《じぶん》が酷《ひど》くぞく/\として心持《こゝろもち》が惡《わる》いのでつい氣《き》になつて
「おつう、そんな姿《なり》で汝《わり》や寒《さむ》かねえか」と聞《き》いた。それから手拭《てぬぐひ》の下《した》から見《み》えるおつぎのあどけない顏《かほ》を凝然《ぢつ》と見《み》た。
「寒《さむ》かあんめえな」おつぎは事《こと》もなげにいつた。與吉《よきち》は懷《ふところ》の中《なか》で頻《しき》りにせがんで居《ゐ》る。お品《しな》は平常《いつも》のやうでなく何《なに》も買《か》つて來《こ》なかつたので、ふと困《こま》つた。
「おつう、そこらに砂糖《さたう》はなかつたつけゝえ」お品《しな》はいつた。おつぎは默《だま》つて草履《ざうり》を脱棄《ぬぎす》てゝ座敷《ざしき》へ駈《か》けあがつて、戸棚《とだな》から小《ちひ》さな古《ふる》い新聞紙《しんぶんし》の袋《ふくろ》を探《さが》し出《だ》して、自分《じぶん》の手《て》の平《ひら》へ少《すこ》し砂糖《さたう》をつまみ出《だ》して
「そら/\」といひながら、手《て》を出《だ》して
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