やうはう》の羽《はね》を擴《ひろ》げて身體《からだ》の平均《へいきん》を保《たも》ちながら慌《あわ》てたやうに塒《とや》へあがつた。さうして青《あを》い煙《けむり》の中《なか》に凝然《ぢつ》として目《め》を閉《と》ぢて居《ゐ》る。
 お品《しな》は家《いへ》に歸《かへ》つて幾《いく》らか暖《あたゝ》まつたがそれでも一|日《にち》冷《ひ》えた所爲《せい》かぞく/\するのが止《や》まなかつた。さうして後《のち》に近所《きんじよ》で風呂《ふろ》を貰《もら》つてゆつくり暖《あつた》まつたら心持《こゝろもち》も癒《なほ》るだらうと思《おも》つた。竈《かまど》には小《ちひ》さな鍋《なべ》が懸《かゝ》つて居《ゐ》る。汁《しる》は葢《ふた》を漂《たゞよ》はすやうにしてぐら/\と煮立《にた》つて居《ゐ》る。外《そと》もいつかとつぷり闇《くら》くなつた。おつぎは竈《かまど》の下《した》から火《ひ》のついてる麁朶《そだ》を一《ひと》つとつて手《て》ランプを點《つ》けて上《あが》り框《がまち》の柱《はしら》へ懸《か》けた。お品《しな》はおつぎが單衣《ひとへ》へ半纏《はんてん》を引《ひ》つ掛《か》けた儘《まゝ》
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