でも懷《ふところ》のいゝのが目《め》につけば自分《じぶん》は後《あと》へ捨《す》てられたやうな酷《ひど》く切《せつ》ないやうな妙《めう》な心持《こゝろもち》になつて、そこに嫉妬《しつと》の念《ねん》が起《おこ》るのである。それだから彼等《かれら》は他《た》の蹉跌《つまづき》を見《み》ると其《その》僻《ひが》んだ心《こゝろ》の中《うち》に竊《ひそか》に痛快《つうくわい》を感《かん》ぜざるを得《え》ないのである。
勘次《かんじ》の家《いへ》には薪《たきゞ》が山《やま》のやうに積《つ》まれてある。それが彼等《かれら》の伴侶《なかま》の注目《ちうもく》を惹《ひ》いた。それとはなしに數次《しばしば》彼《かれ》の主人《しゆじん》に告《つ》げられた。開墾地《かいこんち》で木《き》を焚《た》いた其《その》灰《はひ》をも家《いへ》に運《はこ》んだといふことまで主人《しゆじん》の耳《みゝ》に入《はひ》つた。勘次《かんじ》は開墾《かいこん》の手間賃《てまちん》を比較的《ひかくてき》餘計《よけい》に與《あた》へられる代《かは》りには櫟《くぬぎ》の根《ね》は一つも運《はこ》ばない筈《はず》であつた。彼等《かれ
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