知《し》つて之《これ》を求《もと》めて居《ゐ》るのだといふことは彼《かれ》は始《はじ》めて見《み》て始《はじ》めて知《し》つた。彼《かれ》は滅多《めつた》に川《かは》を越《こ》えて出《で》ることはなかつたのである。
勘次《かんじ》は自分《じぶん》の壁際《かべぎは》には薪《たきゞ》が一|杯《ぱい》に積《つ》まれてある。其《その》上《うへ》に開墾《かいこん》の仕事《しごと》に携《たづさ》はつて何《なん》といつても薪《たきゞ》は段々《だんだん》殖《ふ》えて行《ゆ》くばかりである。更《さら》に其《そ》の開墾《かいこん》に第《だい》一の要件《えうけん》である道具《だうぐ》が今《いま》は完全《くわんぜん》して自分《じぶん》の手《て》に提《さ》げられてある。彼《かれ》は恁《か》ういふ辛苦《しんく》をしてまでも些少《させう》な木片《もくへん》を求《もと》めて居《ゐ》る人々《ひとびと》の前《まへ》に矜《ほこり》を感《かん》じた。彼《かれ》は自分《じぶん》の境遇《きやうぐう》が什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》であるかは思《おも》はなかつた。又《ま
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