のさ」と穢《きたな》い白髮《しらが》と手拭《てぬぐひ》とを吹《ふ》かれながら目《め》を蹙《しか》めていつた。
「どうしても斯《か》う成《な》つちやべろ/\燃《も》えて飽氣《あつけ》なかんべえね」勘次《かんじ》は聞《き》いた。
「赤《あけ》え灰《はひ》に成《な》つてな、火《ひ》も弱《よ》えのさ、そんでも麁朶《そだ》買《か》あよりやえゝかんな、松麁朶《まつそだ》だちつたつてこつちの方《はう》へ來《き》ちや生《なま》で卅五|把《は》だの何《なん》だのつて、ちつちえ癖《くせ》にな、俺《お》らやうな婆《ばゝあ》でも十|把《ぱ》位《ぐれえ》は背負《しよ》へんだもの、近頃《ちかごろ》ぢや燃《もう》す物《もの》が一|番《ばん》不自由《ふじよう》で仕《し》やうねえのさな」婆《ばあ》さんはいつた。
「松麁朶《まつそだ》で卅五|把《は》ぢや相場《さうば》はさうでもねえが、商人《あきんど》がまるき直《なほ》すんだから小《ちひ》さくもなる筈《はず》だな」勘次《かんじ》は首《くび》を傾《かたむ》けていつた。
「さうだごつさらよなあ、そりやさうとおめえさん何處《どこ》だね」萬能《まんのう》を杖《つゑ》にして婆《ばあ
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