鍛冶《かぢ》は赤《あか》く熱《ねつ》した其《そ》の唐鍬《たうぐは》を暫《しばら》く槌《つち》で叩《たゝ》いて、それから土中《どちう》へ据《す》ゑた桶《をけ》の泥《どろ》を溶《と》いたやうな水《みづ》へぢうと浸《ひた》して、更《さら》に又《また》小《ちひ》さな槌《つち》でちん/\と叩《たゝ》いて
「こんだこさ大丈夫《だいぢようぶ》だ、先《せん》にやどうして罅《ひゞ》なんぞいつたけかよ」鍛冶《かぢ》は汗《あせ》の額《ひたひ》を勘次《かんじ》に向《む》けて
「柄《え》が折《を》つちよれねえうちは動《いご》きつこねえから」といつて又《また》
「身體《からだ》の割《わり》にしちや圖《づ》無《ね》えな」と鍛冶《かぢ》は微笑《びせう》した。鐵《てつ》の臭《にほひ》のする唐鍬《たうぐは》を提《さ》げて勘次《かんじ》は復《また》土手《どて》を走《はし》つた。
 其《そ》の日《ひ》も西風《にしかぜ》が枯木《かれき》の林《はやし》から麥畑《むぎばたけ》からさうして鬼怒川《きぬがは》を渡《わた》つて吹《ふ》いた。鬼怒川《きぬがは》の水《みづ》は白《しろ》い波《なみ》が立《た》つて、遠《とほ》くからはそれが粟《
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