ましく》いはなかつた。
 勘次《かんじ》は雨《あめ》でも降《ふ》らねば毎日《まいにち》必《かなら》ず唐鍬《たうぐは》を擔《かつ》いで出《で》た。或《ある》日《ひ》彼《かれ》は木《き》の株《かぶ》へ唐鍬《たうぐは》を強《つよ》く打込《うちこ》んでぐつとこじ扛《あ》げようとした時《とき》鍛《きた》へのいゝ刃《は》と白橿《しらかし》の柄《え》とは強《つよ》かつたのでどうもなかつたが、鐵《てつ》の楔《くさび》で柄《え》の先《さき》を締《し》めた其《そ》の唐鍬《たうぐは》の四|角《かく》な穴《あな》の處《ところ》が俄《にはか》に緩《ゆる》んだ。其處《そこ》はひつといはれて居《ゐ》る。ひつに大《おほ》きな罅《ひゞ》が入《い》つたのである。柄《え》がやがてがた/\に動《うご》いた。
「えゝ、箆棒《べらぼう》、一日《いちんち》の手間《てま》鍛冶屋《かぢや》へ打《ぶ》つ込《こ》んちあなくつちやなんねえ」彼《かれ》は呟《つぶや》いた。
 次《つぎ》の朝《あさ》彼《かれ》は未明《みめい》に鍛冶《かぢ》へ走《はし》つた。
「わし行《い》つて來《き》あんすから、此等《こつら》こと見《み》てゝおくんなせえ」おつぎ
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