耕《たがや》すことや林《はやし》の間《あひだ》に落葉《おちば》や薪《たきゞ》を求《もと》めることがあるに過《す》ぎぬ。自分《じぶん》の食料《しよくれう》に換《かへ》る丈《だけ》の錢《ぜに》を獲《う》ることが其《そ》の期間《きかん》の仕事《しごと》に於《おい》ては見出《みいだ》されないのである。蛇《へび》や蛙《かへる》や其《そ》の他《た》の蟲類《むしるゐ》が假死《かし》の状態《じやうたい》に在《あ》る間《あひだ》に彼等《かれら》は目前《もくぜん》に逼《せま》つて居《を》る未來《みらい》の苦《くる》しみを招《まね》く爲《ため》に、過去《くわこ》の苦《くる》しかつた記念《きねん》である其《そ》の缺乏《けつばふ》した米《こめ》や麥《むぎ》を日《ひ》毎《ごと》に消耗《せうまう》して行《ゆ》くのである。彼等《かれら》は手《て》に内職《ないしよく》を持《も》つて居《を》らぬ。自分《じぶん》の使用《しよう》すべき爲《ため》にのみは筵《むしろ》も草履《ざうり》も畚《もつこ》も草鞋《わらぢ》も其《そ》の他《た》のものも藁《わら》で作《つく》ることを知《し》つて居《を》れども、大抵《たいてい》は刈《か》り後
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