るのと、肥料《ひれう》の缺乏《けつばふ》とで幾《いく》ら焦慮《あせ》つても到底《たうてい》滿足《まんぞく》な結果《けつくわ》が得《え》られないのである。貧乏《びんばふ》な百姓《ひやくしやう》はいつでも土《つち》にくつゝいて食料《しよくれう》を獲《う》ることにばかり腐心《ふしん》して居《ゐ》るにも拘《かゝ》はらず、其《そ》の作物《さくもつ》が俵《たはら》になれば既《すで》に大部分《だいぶぶん》は彼等《かれら》の所有《しよいう》ではない。其《そ》の所有《しよいう》であり得《う》るのは作物《さくもつ》が根《ね》を以《もつ》て田《た》や畑《はた》の土《つち》に立《た》つて居《ゐ》る間《あひだ》のみである。小作料《こさくれう》を拂《はら》つて畢《しま》へば既《すで》に手《て》をつけられた短《みじか》い冬季《とうき》を凌《しの》ぐ丈《だ》けのことがともすれば漸《やうや》くのことである。彼等《かれら》は自分《じぶん》で田畑《たはた》が忙《いそが》しい時《とき》にも其《そ》の日《ひ》に追《おは》れる食料《しよくれう》を求《もとめ》る爲《ため》に比較的《ひかくてき》收入《みいり》のいゝ日傭《ひよう》に行
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