》ぢや一日《いちんち》干《ほ》せば臭《くさ》えな直《なほ》つから」勘次《かんじ》は分疏《いひわけ》でもするやうにいつた。
おつぎは左手《ひだりて》に持《も》ち換《かへ》た手《て》ランプを翳《かざ》して單衣《ひとへ》を弄《いぢ》つては浴後《よくご》のつやゝかな顏《かほ》に微笑《びせう》を含《ふく》んだ。勘次《かんじ》はおつぎの顏《かほ》ばかり見《み》て居《ゐ》た。さうして其《そ》の機嫌《きげん》が恢復《くわいふく》しかけたのを見《み》て
「どうした、それでも汝《わ》りや氣《き》につたか、おつかゞ物《もの》はみんな汝《われ》がもんだかんな、俺《お》ら汝《わ》ツ等《ら》がだとなりや幾《いく》ら困《こま》つたつて、はあ決《けつ》して質《しち》になんざ置《お》かねえから、大事《でえじ》にして汝《われ》能《よ》うく藏《しま》つて置《お》いたえ」と彼《かれ》は滿足《まんぞく》らしく見《み》えた。おつぎは手《て》ランプを置《お》いて勘次《かんじ》がしたやうに鼻《はな》へ當《あ》てゝ臭《にほひ》を嗅《か》いで見《み》たり、左《ひだり》の手《て》だけを袖《そで》へ透《とほ》して見《み》たりした。
「俺《
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