つぎを擲《なぐ》つた。おつぎは麥《むぎ》の幹《から》と共《とも》に倒《たふ》れた。おつぎは倒《たふ》れた儘《まゝ》しく/\と泣《な》いた。
「大概《てえげえ》解《わか》り相《さう》なもんぢやねえか、こんなざまぢや種《たね》ばかし要《い》つて仕《し》やうありやしねえ」勘次《かんじ》は後《あと》を呟《つぶや》いた。隣《となり》の畑《はたけ》に此《これ》も大豆《だいづ》を蒔《ま》いて居《ゐ》た百姓《ひやくしやう》は駈《か》けて來《き》た。
「勘次《かんじ》さんどうしたもんだいまあ、其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》荒《あら》つぺえことして」と勘次《かんじ》を抑《おさ》へた。
「おつぎ泣《な》かねえでさあ起《お》きて仕事《しごと》しろ、おとつゝあげは俺《おれ》謝罪《あやま》つてやつかんなあ、與吉《よきち》が泣《ねえ》てら、さあ行《い》つて見《み》さつせ」百姓《ひやくしやう》は更《さら》におつぎを賺《すか》した。與吉《よきち》はおつぎの姿《すがた》が見《み》えないので頻《しき》りに喚《よ》んだ。それでもおつぎの聲《こゑ》は聞《きこ》えないの
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