居《え》れば汝《われ》ことも奉公《ほうこう》に出《だ》して、おとつゝあ等《ら》もえゝ錢《ぜね》捉《つか》めえんだが、おつかゞ無《な》くなつておとつゝあだつて困《こま》つてんだ、それから汝《われ》だつて奉公《ほうこう》に行《い》つた積《つもり》で辛抱《しんばう》するもんだ、なあ、俺《お》ら汝等《わツら》げみじめ見《み》せてえこたあ有《あ》りやしねんだから」
 勘次《かんじ》はしみ/″\と反覆《くりかへ》した。
 勘次《かんじ》はおつぎに身體《からだ》不相應《ふさうおう》な仕事《しごと》をさせて居《ゐ》ることを知《し》つて居《ゐ》る。それで自分《じぶん》が朝《あさ》は屹度《きつと》先《さき》へ起《お》きて竈《かまど》の下《した》へ火《ひ》を點《つ》ける。其《そ》の時《とき》疲《つか》れた少女《せうぢよ》はまだぐつたりと正體《しやうたい》もなく枕《まくら》からこけて居《ゐ》る。白《しろ》い蒸氣《ゆげ》が釜《かま》の蓋《ふた》から勢《いきほ》ひよく洩《も》れてやがて火《ひ》が引《ひ》かれてからおつぎは起《おこ》される。帯《おび》を締《しめ》た儘《まゝ》横《よこ》になつたおつぎは容易《ようい》に
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