だんべ」
「厭《や》だなんていつた位《くれえ》ひでえとも立金《たてきん》しなくつちやなんねえから」
「どういにすんだんべそら」
「そらなあ、幾《いく》ら勤《つと》めたつて途中《とちう》で厭《や》だからなんて出《で》つちめえば、借《か》りた丈《だけ》の給金《きふきん》はみんな取《と》つくる返《け》えされんのよ、なあ、それから泣《な》き/\も居《ゐ》なくつちやなんねえのよ」
「そんぢや俺《お》らさうえ處《とこ》へ行《い》かねえでよかつたつけな」おつぎは熱心《ねつしん》にいつた。
「そんだから汝等《わツら》こた遣《や》りやしねえ。汝《われ》こと奉公《ほうこう》にやれば其《そ》の錢《ぜね》で俺《お》ら借金《しやくきん》も無《な》くなるし、よき[#「よき」に傍点]ことだつて輕業師《かるわざ》げでも出《だ》しつちめえばそれこそ樂《らく》になつちあんだが、おつかゞ無《な》くつちや辛《つれ》えつて後《あと》で泣《な》かれんの厭《や》だから俺《お》ら土《ちゝ》噛《かぢ》つてもそんな料簡《れうけん》は出《だ》さねんだ」
「おとつゝあ、奉公《ほうこう》すれば借金《しやくきん》なくなんだんべか」
「おつかせえ
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