ん》を示《しめ》した。
「遠《とほ》いんだな、其處《そこ》へ行《い》つたらどうすんだんべ」
「機織《はたおり》するものもあれば百姓《ひやくしやう》するものもあんのよ」
「機教《はたをさ》れぢやよかんべな」
「何《なん》でえゝことあるもんか、家《うち》へなんざあ滅多《めつた》に來《き》られやしねえんだぞ、そんで朝《あさ》から晩迄《ばんまで》みつしら使《つか》あれて、それ處《どこ》ぢやねえ病氣《びやうき》に成《な》つたつて餘程《よつぽど》でなくつちや葉書《はがき》もよこさせやしねえ」
「そんぢや、さうえ處《とこ》へ行《い》つちやひでえな、逃《に》げて來《く》ることも出來《でき》ねえんだんべか」
「直《す》ぐ捉《つか》めえられつちあからそんなに遁《に》げられつかえ」
「巡査《じゆんさ》に捉《つか》まんだんべか」
「さうなもんか、巡査《じゆんさ》でなくつたつて遁《に》げ出《だ》せば直《す》ぐ捉《つか》めえるやうに人《ひと》が番《ばん》してんのよ、なあ、そんでもなくつちや遠《とほ》くの者《もの》ばかり頼《たの》んで置《お》くんだもの仕《し》やうあるもんか」
「そんでも厭《や》だつちつたらどうすん
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