よきち》は笑交《わらひまじ》りに泣《な》いて兩手《りやうて》を出《だ》して抱《だ》かれようとする。
「姉《ねえ》は泥《どろ》だらけで仕《し》やうあんめえな、汚《よご》れてもえゝのかよき[#「よき」に傍点]は」いひながらおつぎは與吉《よきち》を抱《だ》いた。
「どうした、蛙奴《けえるめ》居《ゐ》ねえか、此《こ》の棒《ぼう》でばた/″\と叩《はた》いてやれ、さうしたら痛《いて》えようつて蛙奴《けえるめ》が泣《な》くべえな、泣《な》くな蛙《けえる》だよう、よき[#「よき」に傍点]は泣《な》かねえようつてなあ」おつぎは與吉《よきち》を抱《だ》いた儘《まゝ》勘次《かんじ》の方《ほう》を見《み》て
「おとつゝあ、あつちへ行《え》つちやつた、姉《ねえ》も行《え》かなくつちやなんねえ、おとつゝあに怒《おこ》られつかんな、又《また》えんとして居《ゐ》ろ」おつぎはそつと與吉《よきち》を筵《むしろ》へ卸《おろ》した。
「かせえてやれ、何《なに》してんだ、えゝ加減《かげん》にしろ」勘次《かんじ》は後《うしろ》を向《む》いて呶鳴《どな》つた。
「それ見《み》ろな怒《おこ》られつから、そら此處《こゝ》にえゝものが
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