て居《ゐ》た。
「姉《ねえ》よう」と與吉《よきち》は喚《よ》んだ。おつぎは返辭《へんじ》しなかつた。與吉《よきち》は又《また》喚《よ》んだ。さうして泣《な》き出《だ》した。おつぎは立《た》つて行《い》かうとすると
「構《かま》あねえで置《お》け、耕《うな》つてあつちへ行《い》つてからにしろ」勘次《かんじ》は性急《せいきふ》に嚴《きび》しくおつぎを止《と》めた。おつぎは仕方《しかた》なく泣《な》くのも構《かま》はずに耕《たがや》した。
勘次《かんじ》は先《さき》へ/\と耕《たがや》して堀《ほり》の側《そば》まで來《き》た。
「泣《な》くな、今《いま》姉《ねえ》が後《あと》から來《く》らあ」勘次《かんじ》はかういつて、與吉《よきち》に一|瞥《べつ》を與《あた》へたのみで一|心《しん》に其《そ》の手《て》を動《うご》かして居《ゐ》る。與吉《よきち》はおつぎが漸《やうや》く近《ちか》づいた時《とき》一しきり又《また》泣《な》いた。
「よき[#「よき」に傍点]はどうしたんだ」おつぎは岸《きし》へ上《あが》つて泥《どろ》だらけの足《あし》で草《くさ》の上《うへ》に膝《ひざ》を突《つい》た。與吉《
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