《ところ》に僅《わづか》一枚《いちまい》板《いた》の橋《はし》が斜《なゝめ》に架《か》けてある。お品《しな》は橋《はし》の袂《たもと》で一寸《ちよつと》立《た》ち止《どま》つた。さうして近《ちか》づいた自分《じぶん》の家《いへ》を見《み》た。村落《むら》は臺地《だいち》に在《あ》るのでお品《しな》の家《いへ》の後《うしろ》は直《すぐ》に斜《なゝめ》に田圃《たんぼ》へずり落《お》ち相《さう》な林《はやし》である。楢《なら》や雜木《ざふき》の間《あひだ》に短《みじか》い竹《たけ》が交《まじ》つて居《ゐ》る。いゝ加減《かげん》大《おほ》きくなつた楢《なら》の木《き》は皆《みな》葉《は》が落《お》ち盡《つく》して居《ゐ》るので、其《その》小枝《こえだ》を透《とほ》して凹《くぼ》んだ棟《やのむね》が見《み》える。白《しろ》い羽《はね》の鷄《にはとり》が五六|羽《ぱ》、がり/\と爪《つめ》で土《つち》を掻《か》つ掃《ぱ》いては嘴《くちばし》でそこを啄《つゝ》いて又《また》がり/\と土《つち》を掻《か》つ掃《ぱ》いては餘念《よねん》もなく夕方《ゆふがた》の飼料《ゑさ》を求《もと》めつゝ田圃《たんぼ》
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