を前《まへ》の手桶《てをけ》の柄《え》へ左《ひだり》の手《て》を後《うしろ》の手桶《てをけ》の柄《え》へ掛《か》けて注意《ちうい》しつゝおりた。それでも殆《ほと》んど手桶《てをけ》一|杯《ぱい》に成《な》り相《さう》な蒟蒻《こんにやく》の重量《おもみ》は少《すこ》しふらつく足《あし》を危《あやう》く保《たも》たしめた。やつと人《ひと》の行《ゆ》き違《ちが》ふだけの狹《せま》い田圃《たんぼ》をお品《しな》はそろ/\と運《はこ》んで行《ゆ》く。お品《しな》は白茶《しらちや》けた程《ほど》古《ふる》く成《な》つた股引《もゝひき》へそれでも先《さき》の方《ほう》だけ繼《つ》ぎ足《た》した足袋《たび》を穿《は》いて居《ゐ》る。大《おほ》きな藁草履《わらざうり》は固《かた》めたやうに霜解《しもどけ》の泥《どろ》がくつゝいて、それがぼた/\と足《あし》の運《はこ》びを更《さら》に鈍《にぶ》くして居《ゐ》る。狹《せま》く連《つらな》つて居《ゐ》る田《た》を竪《たて》に用水《ようすゐ》の堀《ほり》がある。二三株《にさんかぶ》比較的《ひかくてき》大《おほ》きな榛《はん》の木《き》の立《た》つて居《ゐ》る處
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