た》むこともあつたが、其《そ》の時《とき》丈《だけ》は勘次《かんじ》とまづくなければお品《しな》の側《そば》でおとつゝあといはれて居《ゐ》たい心持《こゝろもち》もするのであつた。生來《せいらい》子《こ》を持《も》つたことのない彼《かれ》はお品《しな》一人《ひとり》が手頼《てたのみ》であつた。お品《しな》に死《し》なれて彼《かれ》は全《まつた》く孤立《こりつ》した。さうして老後《らうご》は到底《たうてい》勘次《かんじ》の手《て》に託《たく》さねばならぬことに成《な》つて畢《しま》つたのである。それでも不見目《みじめ》な貧相《ひんさう》な勘次《かんじ》は依然《いぜん》として彼《かれ》には蟲《むし》が好《す》かなかつた。彼《かれ》は野田《のだ》へ行《い》けば比較的《ひかくてき》に不自由《ふじいう》のない生活《せいくわつ》がして行《い》かれるので汝等《わつら》が厄介《やくかい》には成《な》らねえでも俺《おれ》はまだ立《たつ》て行《い》かれると、恁《か》うして哀愁《あいしう》に掩《おほ》はれた心《こゝろ》の一|方《ぱう》には老人《としより》の僻《ひが》みと愚癡《ぐち》とが起《おこ》つたのであつた
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