れ》はそんなこんなが不快《ふくわい》に堪《た》へないので次《つぎ》の日《ひ》野田《のだ》へ立《た》つて畢《しま》つた。
 野田《のだ》で卯平《うへい》の役目《やくめ》といへば夜《よる》になつて大《おほ》きな藏々《くら/″\》の間《あひだ》を拍子木《ひやうしぎ》叩《たゝ》いて歩《ある》く丈《だけ》で老人《としより》の體《からだ》にもそれは格別《かくべつ》の辛抱《しんぼう》ではなかつた。晝《ひる》は午睡《ひるね》が許《ゆる》されてあるので其《そ》の時間《じかん》を割《さ》いて器用《きよう》な彼《かれ》には内職《ないしよく》の小遣取《こづかひどり》も少《すこ》しは出來《でき》た。好《す》きな煙草《たばこ》とコツプ酒《ざけ》に渇《かつ》することはなかつた。暑《あつ》い時《とき》にはさつぱりした浴衣《ゆかた》を引《ひ》つ掛《か》けて居《ゐ》ることも出來《でき》た。其處《そこ》は彼《かれ》には住《す》み辛《づら》い處《ところ》でもなかつた。只《たゞ》凍《い》ての酷《ひど》い冬《ふゆ》の夜《よ》などには以前《いぜん》からの持病《ぢびやう》である疝氣《せんき》でどうかすると腰《こし》がきや/\と痛《い
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