義理《ぎり》も足《た》すからといつて出《で》て行《い》つた。
「明日《あした》だつてえゝのに」卯平《うへい》は後《あと》で呟《つぶや》いた。彼《かれ》はぶすり/\と口《くち》は利《き》くのであつたがそれでも先刻《さつき》からのやうにひねくれ曲《まが》つたことは此《こ》れまではいつたことはなかつた。
彼《かれ》は死《し》んだお品《しな》のことを思《おも》つて二人《ふたり》の子《こ》が憐《あは》れになつて勘次《かんじ》の居《ゐ》ない間《あひだ》の面倒《めんだう》を見《み》る氣《き》に成《な》つた。彼《かれ》は僅《わづか》な菓子《くわし》の袋《ふくろ》から小《ちひ》さな與吉《よきち》に慕《した》はれて見《み》ると有繋《さすが》に憎《にく》い心持《こゝろもち》も起《おこ》らなかつた。其《そ》の間《あひだ》彼《かれ》は何《なん》にも不足《ふそく》に思《おも》つては居《ゐ》なかつた。それを勘次《かんじ》が歸《かへ》つて見《み》ると性來《しやうらい》好《す》きでない勘次《かんじ》へ忽《たちま》ちに二人《ふたり》の子《こ》は靡《なび》いて畢《しま》つた。彼《かれ》は此《これ》までの心竭《こゝろづく》
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