知覺《ちかく》のない程《ほど》に彼《かれ》は草臥《くたび》れて夜《よる》は闇《くら》くなつて居《ゐ》た。有繋《さすが》に二人《ふたり》の子《こ》は悦《よろこ》んで與吉《よきち》は勘次《かんじ》の手《て》に縋《すが》つた。卯平《うへい》がしたやうに鐵砲玉《てつぽうだま》が勘次《かんじ》の手《て》から出《で》ることゝ思《おも》つたらしかつた。勘次《かんじ》は苦《くる》しい懷《ふところ》から何《なに》も買《か》つては來《こ》なかつた。彼《かれ》は什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》にしても無邪氣《むじやき》な子《こ》の爲《ため》に小《ちひ》さな菓子《くわし》の一袋《ひとふくろ》も持《も》つて來《こ》なかつたことを心《こゝろ》に悔《く》いた。
「まんま」というて小《ちひ》さな與吉《よきち》は勘次《かんじ》に求《もと》めた。
「そんぢや爺《ぢい》が砂糖《さたう》でも嘗《な》めろ」とおつぎは與吉《よきち》を抱《だい》て※[#「竹かんむり/(目+目)/隻」、第4水準2−83−82]棚《わくだな》の袋《ふくろ》をとつた。寡言《むくち》な卯平《うへい
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