うた》ぐるならわしは預《あづ》かりますめえ」といつて拒絶《きよぜつ》した。
「まあ其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》ことゆはねえで折角《せつかく》のことに、勘次《かんじ》さんも惡《わる》い料簡《れうけん》でしたんでもなかんべえから」と宥《なだ》めても到頭《たうとう》卯平《うへい》は聽《き》かなかつた。
 勘次《かんじ》はどうにか稼《かせ》ぎ出《だ》して歸《かへ》りたいと思《おも》つて一|生懸命《しやうけんめい》になつたがそれは僅《わづか》に生命《せいめい》を繋《つな》ぎ得《え》たに過《すぎ》ないのであつた。近所《きんじよ》の村落《むら》から行《い》つたものは凌《しの》ぎ切《き》れないで夜遁《よにげ》して畢《しま》つたものもあつた。それでも勘次《かんじ》は僅《わづか》に持《も》つて出《で》た財布《さいふ》の錢《ぜに》を減《へ》らさなかつたといふ丈《だけ》のことに繋《つな》ぎ止《と》めた。
「おとつゝあ居《ゐ》て呉《く》れたなあ」と媚《こ》びるやうにいつて自分《じぶん》の家《うち》の閾《しきゐ》を跨《また》いだ時《とき》は足《あし》に
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