《た》つ。其《その》麥《むぎ》や芒《すゝき》の下《した》に居《きよ》を求《もと》める雲雀《ひばり》が時々《とき/″\》空《そら》を占《し》めて春《はる》が深《ふ》けたと喚《よ》びかける。さうすると其《その》同族《どうぞく》の聲《こゑ》のみが空間《くうかん》を支配《しはい》して居可《ゐべ》き筈《はず》だと思《おも》つて居《ゐ》る蛙《かへる》は、其《その》囀《さへづ》る聲《こゑ》を壓《あつ》し去《さ》らうとして互《たがひ》の身體《からだ》を飛《と》び越《こ》え飛び越え鳴《な》き立《た》てるので小勢《こぜい》な雲雀《ひばり》はすつとおりて麥《むぎ》や芒《すゝき》の根《ね》に潜《ひそ》んで畢《しま》ふ。さうしては蛙《かへる》の鳴《な》かぬ日中《につちう》にのみ、之《これ》を仰《あふ》げば眩《まば》ゆさに堪《た》へぬやうに其《そ》の身《み》を遙《はるか》に煌《きら》めく日《ひ》の光《ひかり》の中《なか》に沒《ぼつ》して其《その》小《ちひ》さな咽《のど》の拗切《ちぎ》れるまでは劇《はげ》しく鳴《な》らさうとするのである。蛙《かへる》は愈《いよ/\》益《ます/\》鳴《な》き矜《ほこ》つて樫《かし》の
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