させて居《ゐ》る。夫《それ》と共《とも》に林《はやし》の雜木《ざふき》はまだ持前《もちまへ》の騷《さわ》ぎを止《や》めないで、路傍《みちばた》の梢《こずゑ》がずつと繞《しな》つてお品《しな》の上《うへ》からそれを覗《のぞ》かうとすると、後《うしろ》からも/\林《はやし》の梢《こずゑ》が一|齊《せい》に首《くび》を出《だ》す。さうして暫《しばら》くしては又《また》一|齊《せい》に後《うしろ》へぐつと戻《もど》つて身體《からだ》を横《よこ》に動搖《ゆさぶり》ながら笑《わら》ひ私語《さゞめ》くやうにざわ/\と鳴《な》る。
 お品《しな》は身體《からだ》に變態《へんたい》を來《きた》したことを意識《いしき》すると共《とも》に恐怖心《きようふしん》を懷《いだ》きはじめた。三四|日《か》どうもなかつたから大丈夫《だいぢやうぶ》だとは思《おも》つて見《み》ても、恁《か》う凝然《ぢつ》として居《ゐ》ると遠《とほ》くの方《ほう》へ滅入《めい》つて畢《しま》ふ樣《やう》な心持《こゝろもち》がして、不斷《ふだん》から幾《いく》らか逆上性《のぼせしやう》でもあるのだがさう思《おも》ふと耳《みゝ》が鳴《な》るや
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