うぐ》を棄《す》てゝ遁《に》げることさへあつた。それが如何《どう》したものか何時《いつ》の間《ま》にやら酷《ひど》く自分《じぶん》からお品《しな》の側《そば》へ行《ゆ》きたく成《な》つて畢《しま》つて、他人《たにん》から却《かへつ》て揶揄《からか》はれるやうに成《た》つたのである。
勘次《かんじ》は奉公《ほうこう》の年季《ねんき》を勤《つと》めあげて歸《かへ》つたと成《な》つた時《とき》、卯平《うへい》とは一《ひと》つ家《うち》で竈《かまど》を別《べつ》にすることに成《な》つた。夫婦《ふうふ》と乳呑兒《ちのみご》と三|人《にん》の所帶《しよたい》で彼等《かれら》は卯平《うへい》から殼蕎麥《からそば》が一|斗《と》五|升《しよう》と麥《むぎ》が一|斗《と》と、後《あと》にも先《さき》にもたつた此《こ》れ丈《だけ》が分《わ》けられた。正月《しやうぐわつ》の饂飩《うどん》も打《う》てなかつた。有繋《さすが》にお袋《ふくろ》は小麥粉《こむぎこ》を隱《かく》してお品《しな》へ遣《や》つた。それでも勘次《かんじ》は怖《おそ》ろしい卯平《うへい》と一《ひと》つ竈《かまど》であるよりも却《かへつ》て
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