本意《ほんい》であつた。お袋《ふくろ》が死《し》んでから老《お》いた卯平《うへい》は勘次《かんじ》と一《ひと》つに成《な》らなければならなかつた。其《その》時《とき》はもう勘次《かんじ》が主《あるじ》であつた。さうして疾《とう》に自分《じぶん》の住《す》んで居《ゐ》る土地《とち》までが自分《じぶん》の所有《もの》ではなかつた。それは借錢《しやくせん》の極《きま》りをつける爲《ため》に人《ひと》が立《た》つて東隣《ひがしどなり》へ格外《かくぐわい》な値《ね》で持《も》たせたのである。それ程《ほど》彼《かれ》の家《いへ》は窮《きう》して居《ゐ》た。勘次《かんじ》には卯平《うへい》は畏《おそ》ろしいよりも其《その》時《とき》では寧《むし》ろ厭《いや》な老爺《おやぢ》に成《な》つて居《ゐ》た。二人《ふたり》は滅多《めつた》に口《くち》も利《き》かぬ。それを見《み》て居《ゐ》なければ成《な》らぬお品《しな》の苦心《くしん》は容易《ようい》なものではなかつたのである。
 勘次《かんじ》に頼《たの》まれて南《みなみ》の亭主《ていしゆ》が話《はなし》をした時《とき》に卯平《うへい》はどうしたものかと案
前へ 次へ
全956ページ中141ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング