《だ》さうといふ心《こゝろ》が起《おこ》らなかつた。午餐《ひる》に家《うち》の者《もの》は田《た》から戻《もど》つて其《そ》の飯《めし》を喰《た》べた。ちつとはどうだとお袋《ふくろ》に勸《すゝ》められても勘次《かんじ》は唯《たゞ》俯伏《うつぶし》に成《な》つて居《ゐ》た。
「此《こ》の野郎《やらう》こんな忙《せは》しい時《とき》に轉《ころ》がり込《こ》みやがつてくたばる積《つもり》でもあんべえ」と卯平《うへい》は平生《へいぜい》になく恁《こ》んなことをいつた。勘次《かんじ》は後《あと》で獨《ひと》り泣《な》いた。彼《かれ》はお品《しな》がこつそり蒲團《ふとん》の下《した》へ入《いれ》て呉《く》れた煎餅《せんべい》を噛《かぢ》つたりして二三|日《にち》ごろ/\して居《ゐ》た。其《そ》の頃《ころ》は駄菓子店《だぐわしみせ》も滅多《めつた》に無《な》かつたので此《こ》れ丈《だけ》のことがお品《しな》には餘程《よほど》の心竭《こゝろづく》しであつたのである。勘次《かんじ》はどうも卯平《うへい》が厭《いや》で且《か》つ怖《おそ》ろしくつて仕《し》やうがないので少《すこ》し身體《からだ》が恢復《く
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