は澁《しぶ》り切《き》つた顏《かほ》で迎《むか》へた。お品《しな》が蒲團《ふとん》を敷《し》いて遣《や》つたので勘次《かんじ》はそれへごろりと俯伏《うつぶ》しになつて其《そ》の額《ひたひ》を交叉《かうさ》した手《て》に埋《うづ》めた。家《うち》の者《もの》は皆《みな》田《た》へ出《で》なければならなかつた。病人《びやうにん》に構《かま》つて居《ゐ》ることは仕事《しごと》が許《ゆる》さなかつた。お袋《ふくろ》は出《で》る時《とき》に表《おもて》の大戸《おほど》も閉《た》てながら
「腹《はら》減《へ》つたら此處《こゝ》にあんぞ」といつてばたりと飯臺《はんだい》の蓋《ふた》をした。後《あと》で勘次《かんじ》は蒲團《ふとん》からずり出《だ》して見《み》たら、麥《むぎ》ばかりのぽろ/\した飯《めし》であつた。其《そ》の時分《じぶん》お品《しな》の家《うち》ではさういふ食料《しよくれう》で生命《いのち》を繋《つな》いで居《ゐ》たのである。勘次《かんじ》は奉公《ほうこう》にばかり出《で》て居《ゐ》たのでそれ程《ほど》麁末《そまつ》な物《もの》を口《くち》にしたことはない。それでどうしても手《て》を出
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