》の側《そば》へは坐《すわ》らなかつた。媒妁人《ばいしやくにん》が只《たゞ》酒《さけ》を飮《の》んで騷《さわ》いだ丈《だけ》であつた。お品《しな》は間《ま》もなく女《をんな》の子《こ》を産《う》んだ。それがおつぎであつた。季節《きせつ》は暮《くれ》の押《お》し詰《つま》つた忙《いそが》しい時《とき》であつた。お袋《ふくろ》はお品《しな》が好《す》いて居《ゐ》るので、勘次《かんじ》を不足《ふそく》な婿《むこ》と思《おも》つては居《ゐ》なかつた。勘次《かんじ》は其《その》暮《くれ》も亦《また》主人《しゆじん》へ身《み》を任《まか》せる筈《はず》で前借《ぜんしやく》した給金《きふきん》を、お品《しな》の家《うち》へ注《つ》ぎ込《こ》んだのでお袋《ふくろ》は却《かへつ》て悦《よろこ》んで居《ゐ》た。卯平《うへい》は唯《たゞ》勘次《かんじ》を蟲《むし》が好《すか》なかつた。自分《じぶん》は其《その》大《おほ》きな體躯《からだ》でぐい/\と仕事《しごと》をしつけたのに勘次《かんじ》が小《ちひ》さな體躯《からだ》でちよこ/\と駈《か》け歩《ある》いたり、ただ吩咐《いひつけ》ばかり聞《き》いて居《ゐ》
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